まくり屋よっちゃんの株日記

株式投資や人生の雑感を記します。

実地調査はしないよりもしたほうがマシ

昨秋、某東証一部のリサイクルショップが下方修正を発表した。


それ以前から株価は下げ基調だったが、最終的に株価は天井から半分くらいになった。
創業以来増収増益を継続してきた会社であり、これはもしかして絶好のグリッチなのではないかと思って調査を開始した。誰もが知ってる通り、リサイクルショップの取り扱い商品のうちブランドものや服飾関係は実店舗からネット売買に移行しつつあり、実店舗は参入障壁の低さから過当競争になっている。実店舗中心に展開しているその会社の置かれている環境は明らかに厳しい。しかし、これは誰もがわかっていることだから、その分株価は大幅にディスカウントされているわけであり、ここから再び成長路線に戻ると面白いのではないかと思ったのである。


既存店がずっと前年割れしている状態だから、文書上の調査ではあまり良い点は発見できない。新店は出店したことがない地域では認知度が低くて客入りが悪いらしい。そこを橋頭堡としてドミナント展開をすると説明されているが、リサイクルショップ自体は日本のどの地域にも既に存在する業態であり、屋号の認知度が低いから客入りが少ないという説明は腑に落ちない。買収した高級リサイクルショップの価格も非開示。何故隠すのだろうか。でも株価が下がっているときは何もかも悪く見えるのが普通だし、若社長は「ここから更に成長を目指す」と高らかに宣言し、富士山のゴミ拾い活動とかも行っていて良い人みたいだ。前場で少量の株を買い付けてから近所の実店舗を自転車で巡ったのである。


もう仕事納めになっている暮れの午後なのだが、客は店内に数名しかおらず、店員は無愛想で入店する客を認識する位置にいても「いらっしゃいませ」の一言もない。自分の後から入店してくる客も全員スルーで客を歓迎する姿勢はゼロのようだ。うちの近所の潰れた某イオン系のスーパーも「いらっしゃいませ」も「ありがとう」も言わない店員が多く、近くに出来た競合スーパーにあっさり潰された。もちろん、スーパーとリサイクルショップは業態が違い、店員は冷やかしかもしれない入店者にいちいち「いらっしゃいませ」なんて言わなくても良いのかもしれない。他の店は笑顔で誰に対しても「いらっしゃいませ」と挨拶しているのかもしれない。そこのところはよくわからないが、自分は早々に店舗調査を切り上げ、家に帰ってすぐに株を成り行き売りした。


そもそも素人が実店舗なんて見ても投資判断の有効な材料にはならないことが多い。たまたま繁盛している時間帯を観察してポジティヴな印象を持ってしまったり、その逆もありうる。自分の好きな店は高評価になり、好きでない店は低評価になりがちだ。自分が好きな店だから投資する、応援したい企業だから投資するなんてことをやってたら株式投資でお金は儲からない。だけど、自分が違和感を感じる企業にわざわざ投資しなくても良いだろう。このリサイクルショップで実地に行っている接客姿勢と社長が謳っている企業理念には明らかに齟齬があることを発見しただけでも十分に売り材料となる。この会社が大復活して株価がここから2倍になっても大して悔しくない。他の2倍になる株を取ればいいのだから。

理解できる銘柄なんて殆ど存在しない

ビジネスモデルの分析などをして「ふむふむ、この企業の利益モデルは○○モデルだな」
と頭でわかったつもりになることは容易である。しかし、わかったつもりになっているだけで本当にその企業を理解していることはまずないだろう。


たとえば上場企業の中で10年以上働いている人が自分の会社のビジネスのことを総体的に理解しているだろうか。中の人が投資対象として自社を考えることはあまりないし、己の携わる実務の範囲に習熟すれば通常はそれで十分なので、ビジネス自体を本当に理解していることは稀であろう。


では、会社四季報を読んで興味を持った会社のアニュアルレポートや有価証券報告書をちょっと読んだだけで、そのビジネスを理解できるのだろうか。バフェットくらいになるとそれだけである程度わかるのかも知れないが、普通の人はわかったつもりになるだけでまず理解できないのである。仮に「この企業の将来の成長は鉄板である」と確信するような企業があったとしても、自分がわかることは他者も周知であり、既に株価には向こう数年分の成長が織り込まれている。


数十銘柄から成るポートフォリオを組んでいる人がいるが、そういう人は恐ろしく能力の輪が広い天才投資家であるか、一つの銘柄も理解せずにリスクを分散した気になっているかのどちらかなのだろう。自分みたいな能力が低い者だと、将来の成長が鉄板だと確信できる銘柄で投資妙味があるバリュエーションになっている銘柄など、血眼になって隅から隅まで探しても掌の数も見つからないのだ。


一点勝負やそれに準じる極端に数少ない銘柄で勝負していると、「自信過剰である」とか「リスクを取りすぎている」と、自分の稼いだ金で株を買っているにもかかわらず、有難い批判を頂戴することが多いのだが、こちらから言わせてもらうと話があべこべで、よくわからない数十銘柄に投資しているほうが傲慢だし、リスクを取りすぎているのである。

ビジネスモデル、ビジネスモデル、うるせえよ!

個人投資家の間でビジネスモデルを分析し、互いに議論して、
割安性や成長性を勘案して企業をランク付けするのが静かなブームになっている。


「ここ何年か右肩上がりに成長していて、PERが一桁だから買いました」
みたいないい加減な根拠で株を買う人に比べたら堅実で素晴らしいと思う。


しかし、ビジネスモデル重視派は経営者を重視しないという。
上場に漕ぎ着けるような経営者はそもそも皆優秀であるというのは正論である。
が、ビジネスモデル派が経営者を無視する大きな理由は経営者の能力に賭けることが
知的に見えないからではないかと密かに思っている。


「この経営者は凄いと思うから株を買いました」と言っている人って
馬鹿みたいに見えるじゃないですか。


でもそういう馬鹿みたいな人が日本電産やソフトバンクで大儲けできた。


また、ビジネスモデル派は一度優れたビジネスモデルを構築すると半永久的に優位性が
持続すると考えているフシがあるのも気に入らない。バフェットは「馬鹿でも経営できる会社を買いなさい」と言っているが、それはコモディティ業界に投資することを
戒めているわけであって、経営者を軽視しろと言っているわけではない。


ピーシーデポを持ち出すまでもなく、ビジネスモデルなんて蟻の一穴で崩壊する。
蟻の一穴で土台が崩れ去るということを理解していて日々戦々恐々としているのが
優れた経営者であり、そういう経営者が運に恵まれて偶然優れたビジネスモデルを
構築できたときにビジョナリーカンパニーが誕生するのではあるまいか。


そういう意味で、ひふみ投信の経営者の顔が見えない企業には投資しないという考えには大いに賛同できるし、出来れば経営者だけでなく、幹部についても調査してから株を買いたいものだと思っている。